アルキメデスの螺旋
やはりドシテオスにささげられた『螺旋について』で、アルキメデスは運動によって定義される新しい曲線を調べている。
平面上の直線が、固定された一方の端のまわりを一様な速さで回転して出発点の位置にもどり、同時に一点が固定された端から出発して直線にそって一様な速さで動くならば、その点は平面上に螺旋をえがく。
— アルキメデス『螺旋について』、定義
方程式
極座標では、点から中心までの距離 $r$ は、直線が回った角 $\theta$ と同じ割合で増える。
$$r = a\,\theta.$$一回転するごとに半径は同じだけ、$2\pi a$ ずつ増えるので、続く巻きは等しい間隔で並ぶ。レコード盤の溝や、地面に巻いたホースのようにである。
円の三分の一
アルキメデスは、最初の一回転のあいだに半径がはく面積を計算した。手法はここでも取りつくし法で、一回転を多くの細い扇形に分け、曲線の内側のものと外側のものを足しあわせる。現代の記法では、角 $d\theta$、半径 $r$ の扇形の面積は $\frac{1}{2}r^2\,d\theta$ だから
$$A = \int_0^{2\pi} \frac{1}{2}(a\theta)^2\,d\theta = \frac{a^2}{2}\cdot\frac{(2\pi)^3}{3} = \frac{4}{3}\pi^3 a^2.$$最初の一回転の終わりの半径 $R = 2\pi a$ を半径とする円の面積は $\pi R^2 = 4\pi^3 a^2$ である。螺旋の面積はそのちょうど三分の一になる。
$$\frac{A}{\pi R^2} = \frac{\frac{4}{3}\pi^3 a^2}{4\pi^3 a^2} = \frac{1}{3}.$$そこにたどり着くために、アルキメデスは平方の和 $1^2 + 2^2 + \cdots + n^2$ についての公式を必要とした。それは、この和が $\frac{n^3}{3}$ と $\frac{(n+1)^3}{3}$ のあいだにあると言うのと同じことである。微積分で $\int x^2\,dx = \frac{x^3}{3}$ を与えるのも、この和である。
接線と円周
アルキメデスは螺旋の接線の向きも見つけた。導関数のない時代としては驚くべき業績である。この結果には意外な帰結がある。最初の一回転の終わりで、接線は、中心を通り半径に垂直な直線と交わるが、その交点から中心までの距離は、半径 $R$ の円の円周にちょうど等しいのである。こうして螺旋を使えば円周と同じ長さの線分を作図でき、それによって円の求積もできる。螺旋そのものは定規とコンパスでは描けないので、定規とコンパスによる作図ではない。しかし、ほんの少し複雑な曲線を使えば問題が解けることを示している。
練習:二回転目
二回転目、つまり $\theta = 2\pi$ から $\theta = 4\pi$ までに半径がはく面積はいくらか。一回転目とくらべよ。
$\int_{2\pi}^{4\pi}\frac{a^2\theta^2}{2}\,d\theta = \frac{a^2}{6}\left[(4\pi)^3 - (2\pi)^3\right] = \frac{a^2}{6}\cdot 56\pi^3 = \frac{28}{3}\pi^3 a^2$。一回転目は $\frac{4}{3}\pi^3 a^2$ だったから、二回転目は七倍の面積をはく。(二回転目にはく面積には、一回転目ですでにはいた領域も含まれる。アルキメデスは二つの巻きのあいだの環の面積も計算しており、それは一回転目の六倍である。)
練習:平方の和
$n = 10$ のときにアルキメデスの不等式 $\frac{10^3}{3} < 1^2 + 2^2 + \cdots + 10^2 < \frac{11^3}{3}$ を確かめよ。
和は $\frac{10 \cdot 11 \cdot 21}{6} = 385$ である。限界は $\frac{1000}{3} \approx 333.3$ と $\frac{1331}{3} \approx 443.7$ で、たしかに $333.3 < 385 < 443.7$ となる。$n$ が大きくなると、和を $n^3$ で割ったものは $\frac{1}{3}$ に近づく。螺旋の「三分の一」はここから来ているのである。
出典: アルキメデス『螺旋について』定義と命題 10、18–20、24 · Thomas L. Heath、The Works of Archimedes(1897) · E. J. Dijksterhuis、Archimedes(1956)、第 XI 章。