てこはアルキメデスよりずっと前から、石を持ち上げたり、井戸から水をくんだり、品物を量ったりするのに使われていた。アルキメデスが新しくしたのは、てこを定理にしたことである。『平面の釣り合いについて』で、彼は「等しい重さのものは等しい距離でつりあう」といった少数の簡単な公理から出発し、エウクレイデスの『原論』のやり方で一般的な法則を導いている。

法則

量は、通約可能であれ通約不可能であれ、その重さに反比例する距離においてつりあう。

— アルキメデス『平面の釣り合いについて』第 I 巻、命題 6 と 7

重さ $P_1$ が支点から距離 $d_1$ に、重さ $P_2$ が反対側の距離 $d_2$ にあるとき、てこがつりあうのは

$$\frac{P_1}{P_2} = \frac{d_2}{d_1} \quad\Longleftrightarrow\quad P_1\,d_1 = P_2\,d_2$$

のときである。支点から遠い小さなおもりが、支点に近い大きなおもりとつりあう。今日モーメント、あるいはトルクと呼ぶ積 $P \cdot d$ が、両側で等しくなければならないのである。

証明の考え方

いちばん簡単な場合が議論の精神を示している。左側の支点から距離 1 のところに重さ 2 単位のおもりが、右側の距離 2 のところに重さ 1 単位のおもりがあるとする。重さ 2 のおもりを、ちょうど支点の上に一つ、左側の距離 2 のところに一つという、二つの単位のおもりに置きかえる。二つの重心は距離 1 のままだから、公理のひとつによって、つりあいは変わらない。ところが今度は、$-2$、$0$、$+2$ の位置に等しいおもりが三つ並んでいる。支点について対称な並びだから、明らかにつりあう。アルキメデスはこの推論を、おもりを等しい単位に分けることで通約可能な任意の重さに広げ、さらに背理法で通約不可能な重さにまで広げた。

重心

同じ論考は、平面図形の重心、つまり図形を針の先にのせたときにつりあう点の求め方も教えている。たとえばアルキメデスは、三角形の重心が中線の交点で、各頂点から三分の二のところにあることを示した。図形全体を、その重さが一点に集まっているかのように扱うというこの考えが、彼が最大の公式を発見した方法の鍵になる。

てこで地球を動かすアルキメデス。ロンドンの『メカニクス・マガジン』1824 年の版画。
てこで地球を動かすアルキメデス。ロンドンの『メカニクス・マガジン』1824 年の版画。Mechanics Magazine · Wikimedia Commons · パブリックドメイン
練習:一輪車

一輪車に 60 kg の砂を積み、その重心は車輪から 40 cm のところにある。手は車輪から 120 cm のところで取っ手を握る。手はどれだけの重さを支えなければならないか。

車輪が支点である。両側のモーメントが等しくなければならないから、$60 \times 40 = F \times 120$、よって $F = 20$ kg。一輪車は、荷が支点と力点のあいだにあるてこで、手は重さの三分の一だけを支えればよい。

練習:地球を動かす

地球の質量はおよそ $6 \times 10^{24}$ kg である。アルキメデスが 60 kg に相当する力で押して、短い腕が 1 m のてこで地球とつりあわせようとしたら、長い腕の長さはいくら必要か。また、地球を 1 cm 持ち上げるには、腕の端をどれだけ動かさなければならないか。

法則により $6 \times 10^{24} \times 1 = 60 \times d$ だから $d = 10^{23}$ m、およそ一千万光年で、アンドロメダ銀河までの距離より遠い。移動量は腕の長さと同じ比になるので、地球を 1 cm 持ち上げるには、腕の端を $10^{23} \times 0.01 = 10^{21}$ m 下げなければならない。法則は正しい。欠けているのは立つ場所のほうである。

出典: アルキメデス『平面の釣り合いについて』第 I 巻 · アレクサンドリアのパップス『数学集成』第 VIII 巻 · プルタルコス『マルケルス伝』14 · E. J. Dijksterhuis、Archimedes(1956)、第 IX 章 · Thomas L. Heath、The Works of Archimedes(1897)。


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