流率:瞬間の変化をどう測るか
ある車が、90 キロ離れた別の街まで 1 時間で着きました。平均の速さは時速 90 キロです。でも速度計は、一瞬ごとに違う数字を示していました。速度計はいったい何を測っているのでしょうか。速さは距離を時間で割ったものですが、一瞬のあいだには距離も進まず、時間も経ちません。ゼロをゼロで割っても答えは出ません。
これこそ、1665 年にニュートンが答えようとした問いでした。その答えが流率法です。
流れる量
ニュートンは、変化する量を、川の水のように時間とともに流れるものと考えました。流れる量を流量(フルーエント)、それが流れる速さを流率(フラクション)と呼びました。流率を表すには、文字の上に小さな点を打ちました。1704 年に出版された『曲線の求積について』で、彼はこう書いています。
$x$、$y$、$z$ を流量とし、その流率をそれぞれ $\dot x$、$\dot y$、$\dot z$ で表す。
— アイザック・ニュートン『曲線の求積について』(1704)
$x$ が位置なら、$\dot x$ は速度です。言いかえれば、速度は空間から「流れ出る」のです。二つの点 $\ddot x$ は流率の流率、つまり加速度を表します。
ニュートンの計算
$y=x^2$ がどう変化するかを調べるため、ニュートンはごく短い時間を流しました。それを $o$ と書きます。その間に $x$ は $x+\dot x\,o$ に、$y$ は $y+\dot y\,o$ になります。関係 $y=x^2$ は変わらず成り立つので、
$$y+\dot y\,o=(x+\dot x\,o)^2=x^2+2x\dot x\,o+\dot x^2o^2.$$両辺から $y=x^2$ を引いて $o$ で割ると、
$$\dot y=2x\dot x+\dot x^2\,o.$$ここで大胆な一歩です。$o$ は「無限に小さい」ので、ニュートンは最後の項を捨てました。残るのは $\dot y=2x\dot x$、つまり $y$ は $x$ の $2x$ 倍の速さで変化する、ということです。
同じ計算を、今日の書き方で
極限を使えば、亡霊なしに議論をやり直せます。$x$ と $x+h$($h\neq0$)の間の割線の傾きは
$$\frac{(x+h)^2-x^2}{h}=\frac{2xh+h^2}{h}=2x+h.$$まず $h$ がまだゼロでないうちに簡単にします。そのあとで、$h$ をどんどん小さくすると $2x+h$ がどんな値に近づくかを問います。答えは $2x$ です。
$$\frac{d}{dx}\left(x^2\right)=2x.$$図で、曲線と 2 点で交わる直線が割線です。$h$ を小さくして、割線が回転し接線と重なる様子を見てください。
位置、速度、加速度
流率法は運動のために生まれました。ある物体の位置(メートル)が
$$S=12-7t+t^2$$だとします。$S$ の流率が速度、速度の流率が加速度です。
$$\dot S=-7+2t,\qquad \ddot S=2\ \text{m/s}^2.$$はじめ速度は負で、物体は後ろ向きに動きます。$t=3.5$ 秒で $\dot S=0$ となり、一瞬止まります。そのあと再び前に進み、どんどん速くなります。この速度ゼロの瞬間は $S$ のグラフのいちばん低い点です。つまり流率は最大値や最小値を求めるのにも使えるのです。
単位は計算の確認に役立ちます。$S=12-7t+t^2$ の答えがメートルになるためには、どの項もメートルでなければなりません。$12$ は m、$7$ は m/s、$t^2$ の係数 $1$ は m/s² で測られています。流率をとるたびに、もう一つ秒で割ることになります。$\dot S$ は m/s、$\ddot S$ は m/s² になります。もし計算でメートルとメートル毎秒を足していたら、どこかに誤りがあります。この確認を次元解析といい、物理学で最も簡単で最も役に立つ道具の一つです。
流率、導関数、そしてライプニッツ
ニュートンの流率についての論文は 1671 年ごろには完成していましたが、出版されたのは彼の死後、1736 年でした。その間に、ライプニッツが独立に同じ考えにたどり着き、1684 年に別の記号 $\dfrac{dy}{dx}$ で先に発表しました。今日、微積分ではライプニッツの記号を、物理学では時間についての導関数にニュートンの点を使っています。
練習:x = 3 における y = x² の傾きは?
導関数は $2x$ なので、傾きは $6$。その点での接線は $y-9=6(x-3)$、つまり $y=6x-9$ です。
練習:S = 5t² のとき、t = 2 での速度と加速度は?
$\dot S=10t$ なので、$t=2$ での速度は $20$。加速度 $\ddot S=10$ は一定です。
資料: ニュートン・プロジェクトの級数と流率の手稿 · ニュートンと微積分、MacTutor。