ムッシュー・ルブランの手紙:余りの算術
1804 年にソフィー・ジェルマンがガウスに手紙を書いたとき、二人は生まれたばかりのことばで話していました。その三年前、『整数論』のなかでガウスは新しい記号 $\equiv$ と、整数についての新しい考え方を導入していました。数が何であるかではなく、わり算でどんな余りを残すかで考えるのです。ソフィーがのちにフェルマーについて書いたことは、すべてこのことばで書かれています。学んでおく価値があります。
時計の算術
今 9 時なら、5 時間後は何時でしょうか。針のある時計で 14 と答える人はいません。2 と答えます。時計は 12 でわった余りだけをおぼえているのです。ガウスはこれを
$$14\equiv2\pmod{12}$$と書きました。「14 は 12 を法として 2 と合同」と読みます。一般に $a\equiv b\pmod m$ は、$a$ と $b$ を $m$ でわった余りが等しい、つまり $a-b$ が $m$ の倍数であることを意味します。
大きな利点は、合同式が等式のように足したりかけたりできることです。$a\equiv b$ かつ $c\equiv d\pmod m$ なら、
$$a+c\equiv b+d\qquad\text{かつ}\qquad a\cdot c\equiv b\cdot d\pmod m.$$これで、計算の途中で巨大な数を小さな余りに置きかえられます。たとえば、$7^{100}$ の一の位は何でしょうか。一の位は 10 でわった余りです。7 のべきの一の位は $7, 9, 3, 1$ とくり返します。$7^4=2401\equiv1\pmod{10}$ だからです。よって
$$7^{100}=\left(7^4\right)^{25}\equiv1^{25}=1\pmod{10}.$$$7^{100}$ は 85 けたの数ですが、ほかのけたを一つも計算せずに、最後のけたがわかります。
べきと余り
ガウスの、そしてのちにソフィーのお気に入りのテーマは、素数を法とするべきでした。素数 $p=7$ をとり、それぞれの数を 3 乗して、7 でわった余りだけを残してみましょう。
| $x$ | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $x^3 \bmod 7$ | 0 | 1 | 1 | 6 | 1 | 6 | 6 |
現れる余りは $0$、$1$、$6$ の三つだけです。$6\equiv-1\pmod7$ なので、つまり $0$ と $\pm1$ です。7 時間の時計で見ると、立方数はとても貧しいのです。ソフィー・ジェルマンがフェルマーについての定理で使ったのは、まさにこの貧しさでした。
なぜこうなるのでしょうか。フェルマーの小定理により、$x$ が 7 の倍数でなければ $x^6\equiv1\pmod 7$ です。ところが $x^6=(x^3)^2$。したがって $x^3$ は 2 乗すると 1 になる数で、素数を法としてそのような数は $1$ と $-1$ しかありません。$2p+1$ が素数なら、いつでも同じ議論が成り立ちます。$2p+1$ を法とする $p$ 乗は、$0$、$1$、$-1$ のどれかにしかなりません。
手紙に書かれていたこと
最初の手紙で、ムッシュー・ルブランはガウスに、『整数論』の結果の新しい証明といくつかの一般化を送りました。ガウスは、自分を超えていける読者を見つけたことを喜んで返事を書きました。その読者がだれかを知ったとき、敬意はますます深まりました。1807 年の手紙でガウスは、贈りもののように、まだ発表していないべきの余りについての新しい結果をいくつか彼女に伝えています。
練習問題:2¹⁰ を 11 でわった余りは?
$2^5=32=2\cdot11+10$ なので、$2^5\equiv10\equiv-1\pmod{11}$。よって $2^{10}=\left(2^5\right)^2\equiv(-1)^2=1\pmod{11}$。フェルマーの小定理 $2^{11-1}\equiv1\pmod{11}$ と一致します。
練習問題:5 乗を 11 でわると、どんな余りが残るか?
$11=2\cdot5+1$ は素数なので、本文の議論により、現れうるのは $0$、$1$、$-1\equiv10$ だけです。いくつか確かめると、$2^5=32\equiv10$、$3^5=243=22\cdot11+1\equiv1$、$4^5=1024=93\cdot11+1\equiv1$。$0$ から $10$ までの十一個の数から出てくる余りは、全部で $0$、$1$、$10$ だけです。
出典: Carl Friedrich Gauss, Disquisitiones arithmeticae(1801)、第 1・2 条 · ソフィー・ジェルマンの伝記、MacTutor · Andrea Del Centina and Alessandra Fiocca, “The correspondence between Sophie Germain and Carl Friedrich Gauss”, Archive for History of Exact Sciences(2012)。
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