幾何学者たちは代数方程式の一般的な解法に大いに取り組み、その何人かはその不可能性を証明しようとした。しかし、私の思いちがいでなければ、これまでだれも成功していない。

— ニールス・ヘンリック・アーベル『代数方程式についての論文』(1824)

学校に通った人ならだれでも、方程式を解く公式を一つ知っています。2 次方程式の解の公式です。方程式 $ax^2+bx+c=0$ の解は

$$x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}.$$

このやり方は四則演算と平方根一つしか使いません。バビロニア人はほぼ四千年前にこの種の問題を解いていましたし、ユークリッドは正方形と長方形で解きました。自然に浮かぶ問いは、もっと次数の高い方程式にも、このようなやり方があるのか、ということです。

3 次と 4 次

3 次の答えはルネサンスのイタリアから来ました。シピオーネ・デル・フェッロ、ニコロ・タルターリア、ジェロラモ・カルダノが公式を見つけ、カルダノが 1545 年に『アルス・マグナ』で発表しました。方程式 $x^3+px+q=0$ の解の一つは

$$x=\sqrt[3]{-\frac q2+\sqrt{\frac{q^2}4+\frac{p^3}{27}}}+\sqrt[3]{-\frac q2-\sqrt{\frac{q^2}4+\frac{p^3}{27}}}.$$

$x^3+6x-20=0$、つまり $p=6$、$q=-20$ で確かめてみましょう。まず平方根です。

$$\frac{q^2}4+\frac{p^3}{27}=100+8=108,\qquad\sqrt{108}=6\sqrt3.$$

公式は

$$x=\sqrt[3]{10+6\sqrt3}+\sqrt[3]{10-6\sqrt3}$$

を与えます。ひどく見えますが、$(1+\sqrt3)^3=1+3\sqrt3+9+3\sqrt3=10+6\sqrt3$ で、同じように $(1-\sqrt3)^3=10-6\sqrt3$ です。したがって

$$x=(1+\sqrt3)+(1-\sqrt3)=2.$$

たしかに $2^3+6\cdot2-20=0$ です。まもなく、カルダノの弟子ロドヴィコ・フェラーリが 4 次の公式を見つけ、同じ本に載りました。どちらも四則演算と累乗根しか使いません。このような方程式は累乗根で解けるといいます。

二百五十年の試み

残ったのは 5 次でした。二世紀以上にわたって最も偉大な数学者たちが挑み、4 次までうまくいったどの技法も 5 次で行き詰まりました。1771 年、ラグランジュは、技法がなぜうまくいくのかを説明しました。根を入れ替えたとき、根でできたある式がどう変わるかにかかっていたのです。5 次では、その勘定が合いませんでした。1799 年、イタリアのパオロ・ルフィニが公式は存在しないという証明を発表しましたが、すきがあり、ほとんどだれも受け入れませんでした。

アーベルの定理

1824 年、アーベルは完全な証明を与えました。

$$\boxed{n\geq5\text{ 次の一般の方程式には、四則演算と累乗根による公式は存在しない。}}$$

今日この結果はアーベル=ルフィニの定理と呼ばれます。証明の考え方は、そのような公式があると仮定して、それがどう組み立てられなければならないかを見ることです。公式は層をなして作られ、各層は前の層でできた式の累乗根をとります。アーベルは、こうした途中の根のそれぞれが、方程式の五つの根の式でなければならないことを示しました。ここでラグランジュとルフィニの議論が登場します。五つの根の入れ替え方は $5!=120$ 通りあり、公式に必要な式は、五文字のどんな式にもできない変わり方をしなければならないのです。仮定は矛盾に至ります。

定理が何を言っているかを正確に理解しておくことが大切です。定理は、どの 5 次方程式も解けない、とは言っていません。方程式 $x^5-32=0$ には $x=\sqrt[5]{32}=2$ という解があります。存在しないのは、係数からすべての 5 次方程式を解ける一般の公式です。そして、たとえば

$$x^5-x-1=0$$

のような個別の方程式もあります。その実数解 $x\approx1.1673$ は存在し、何桁でも計算できますが、どうやっても累乗根では書けません。どの方程式が解けて、どれが解けないのか。その問いには数年後にガロアが答えました。

練習問題:1572 年にラファエル・ボンベリがしたように、カルダノの公式を x³ − 15x − 4 = 0 に当てはめよ。

ここでは $p=-15$、$q=-4$ で、$\frac{q^2}4+\frac{p^3}{27}=4-125=-121$ です。公式は負の数の平方根 $\sqrt{-121}=11i$ を求めます:$x=\sqrt[3]{2+11i}+\sqrt[3]{2-11i}$。ボンベリは $(2+i)^3=8+12i-6-i=2+11i$、$(2-i)^3=2-11i$ であることに気づきました。よって $x=(2+i)+(2-i)=4$ で、たしかに $64-60-4=0$ です。虚数はこの扉から数学に入ってきました。実数の答えにたどり着くために、3 次の公式はときに虚数を通らなければならないのです。

練習問題:方程式 x⁵ − 3 = 0 は累乗根で解けるか。それはアーベルの定理と矛盾するか。

解けます。$x=\sqrt[5]3\approx1.2457$ は累乗根で書かれた解です。矛盾はありません。定理が言っているのは、係数が任意の一般の方程式 $ax^5+bx^4+cx^3+dx^2+ex+f=0$ についてです。個別の 5 次方程式の中には累乗根で解けるものもあります。存在しないのは、すべてに使える一つの公式です。

出典: Niels Henrik Abel、Mémoire sur les équations algébriques(Christiania、1824)および “Beweis der Unmöglichkeit, algebraische Gleichungen von höheren Graden als dem vierten allgemein aufzulösen”、Journal für die reine und angewandte Mathematik 1(1826)· Peter Pesic、Abel’s Proof(MIT Press、2003)· アーベルの伝記、MacTutor。


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