指数計算:x の x 乗を微分する
ライプニッツの微積分は、$x^3$ や $x^{1/2}$ のように指数が決まったべき乗なら微分できました。$x^n$ の導関数は $nx^{n-1}$ です。ところが 1694 年、ライプニッツへの手紙で、ヨハン・ベルヌーイは奇妙なものをもちだしました。
$$y=x^x$$という式です。底 と 指数が同時に変わります。指数が決まっていないので $x^n$ の規則は使えません。底が決まっていないので $a^x$ の規則も使えません。1697 年、ヨハンは『学術紀要』に「指数計算の原理」を発表し、こうしたべき乗の扱い方を示しました。指数がいろいろな値を走りぬけるので、彼はそれを 走るべき (percurrent)と呼びました。
対数のこつ
べき乗を、微分のしかたを知っている積に変えるのが考えどころです。$x>0$ として、両辺の自然対数をとります。
$$\ln y=x\ln x.$$両辺を $x$ で微分します。左辺は連鎖律で $\dfrac{y'}y$。右辺は積の微分で $1\cdot\ln x+x\cdot\dfrac1x=\ln x+1$。したがって $\dfrac{y'}{y}=\ln x+1$ で、
$$\boxed{\frac{d}{dx}\,x^x=x^x\,(\ln x+1).}$$関数そのものではなくその対数を微分するこの技法は、対数微分法 と呼ばれるようになりました。$f>0$ の任意の $y=f(x)^{g(x)}$ に使えます。
$$\ln y=g\ln f\quad\Longrightarrow\quad y'=f^{\,g}\left(g'\ln f+g\,\frac{f'}f\right).$$かっこのなかの二つの項は、二つの変化を数えています。指数の変化 $g'\ln f$ と、底の変化 $g\frac{f'}f$ です。底が決まっていれば第一項だけが残って $\frac{d}{dx}a^x=a^x\ln a$ に戻り、指数が決まっていれば第二項だけが残って $nx^{n-1}$ に戻ります。
x の x 乗がいちばん小さくなるところ
$x^x$ はいつも正なので、導関数の符号は $\ln x+1$ の符号です。$x<\frac1e$ では負、$x>\frac1e$ では正になります。関数は $x=\frac1e\approx0.368$ まで減り、それから増えます。最小値は
$$\left(\frac1e\right)^{1/e}=e^{-1/e}\approx0.692.$$つまり、どんな正の数も、自分自身で累乗して $0.692$ より小さくなることはありません。たとえば $0.5^{0.5}=\sqrt{0.5}\approx0.707$、$0.3^{0.3}\approx0.697$ で、どちらも少し上です。
0 の近くでは?
$x$ が 0 に近づくと $x^x$ はどうなるでしょう。底は 0 に向かって下に引っぱり、指数は 0 に向かって 1 のほうへ引っぱります。どちらが勝つか。$x^x=e^{x\ln x}$ と書き、指数を ロピタルの定理 で計算します。
$$\lim_{x\to0^+}x\ln x=\lim_{x\to0^+}\frac{\ln x}{1/x}=\lim_{x\to0^+}\frac{1/x}{-1/x^2}=\lim_{x\to0^+}(-x)=0.$$よって $x^x\to e^0=1$。指数の勝ちです。電卓で確かめると、$0.1^{0.1}\approx0.794$、$0.01^{0.01}\approx0.955$、$0.001^{0.001}\approx0.993$。
練習問題:x > −1 で (1 + x) の x 乗を微分せよ。
$f=1+x$、$g=x$ とすると $g'=1$、$f'=1$ なので、
$$\frac{d}{dx}(1+x)^x=(1+x)^x\left[\ln(1+x)+\frac{x}{1+x}\right].$$$x=1$ では関数の値は $2$、導関数の値は $2\left(\ln2+\frac12\right)\approx2.386$ です。
練習問題:曲線 y = x の x 乗の、x = 1 での傾きは? x = e では?
$x=1$ では $1^1(\ln1+1)=1$。$(1,1)$ での接線の傾きは 1 で、直線 $y=x$ と同じです。$x=e$ では $e^e(\ln e+1)=2e^e\approx30.3$。この関数はとても速く増えます。$e^e\approx15.15$ で、$x=4$ ではもう $4^4=256$ です。
出典: Johann Bernoulli、“Principia calculi exponentialium seu percurrentium”、Acta Eruditorum(1697)· Florian Cajori、“History of the exponential and logarithmic concepts”、The American Mathematical Monthly 20(1913)· ヨハン・ベルヌーイの伝記、MacTutor。