パスカルの三角形:足し算で組み立てる
$1$ を一つ書きます。その下に $1$ を二つ。そこから先は、どの行も $1$ で始まり $1$ で終わり、あいだの数はそれぞれすぐ上にある二つの数の和です。
$$\begin{array}{ccccccccccc} &&&&&1&&&&&\\ &&&&1&&1&&&&\\ &&&1&&2&&1&&&\\ &&1&&3&&3&&1&&\\ &1&&4&&6&&4&&1&\\ 1&&5&&10&&10&&5&&1 \end{array}$$これだけです。子どもが一分で覚えられる規則から、数学で最も豊かな表の一つが生まれます。今日これはパスカルの三角形と呼ばれていますが、パスカルはこれを見つけた最後の一人のようなものでした。
持ち主がたくさんいる三角形
インドでは紀元前 2 世紀ごろ、詩人ピンガラが詩の一行で長い音節と短い音節を組み合わせる方法の数を数え、同じ数にたどり着きました。10 世紀には注釈者ハラーユダがこの表を描き、メール・プラスターラ、「メール山の階段」と呼びました。
バグダードでは西暦 1000 年ごろ、カラジーがこの三角形を使って $(a+b)^5$ のような累乗を展開しました。彼の本は失われましたが、一世紀半後の 1150 年ごろ、サマウアルが表と推論を書き写し、カラジーの功績だと記しました。ペルシアでは、この三角形は詩人で数学者のウマル・ハイヤームとも結びつけられています。
中国では、賈憲が 1050 年ごろ、これを開平・開立に使っていました。楊輝が 1261 年に書物に載せ、朱世傑は 1303 年の『四元玉鑑』に算木で数を記した図を描きました。
ヨーロッパでは、1527 年にペトルス・アピアヌスの算術書の表紙に印刷されたのが最初です。その後、1544 年にミヒャエル・シュティーフェル、1556 年にニコロ・タルタリアが使いました。今でもイタリアではタルタリアの三角形、イランではハイヤームの三角形、中国では楊輝の三角形と呼ばれています。
パスカルの論文
1654 年、フェルマーと賭けについて議論していたころ、パスカルは『算術三角形論』を書きました。フランス語版とラテン語版があり、次のように始まります。
算術三角形は次のように作る。任意の点 Z から、互いに垂直な二本の直線 ZL と ZT を引き、それぞれの上に好きなだけ等しい部分を印す。
— ブレーズ・パスカル『算術三角形』(1654)
パスカルの三角形は、実は階段の形をしたマス目の表でした。彼は一つひとつのマスをセル、行を平行列、列を垂直列、斜めの並びを底と呼びました。各セルは、上のセルと左のセルの和になっています。今日私たちが使う規則と同じで、ただ向きが回っているだけです。
パスカルがこの表を発見したわけではありません。彼がしたのは、この表の十九の性質を一つずつ証明し、組合せを数える、累乗を展開する、賭け金を分けるという三つの異なる問題での使い方を示したことです。あまりに徹底していたので、五十年後にピエール・ド・モンモールはこれを「パスカル氏の表」と呼び、アブラーム・ド・モアブルは Triangulum arithmeticum Pascalianum と呼びました。その名前が定着したのです。
記号で書いた規則
行は $0$ から番号をつけ、各行の中の位置も $0$ から数えます。$n$ 行目の位置 $k$ にある数を $C(n,k)$ と書きます。作り方の規則は
$$C(n,k)=C(n-1,k-1)+C(n-1,k),$$で、$C(n,0)=C(n,n)=1$ です。たとえば 5 行目では、$C(5,2)=C(4,1)+C(4,2)=4+6=10$ です。
やってみましょう。行と位置を選んでください。あいだの数はどれも、上の二つの隣の数の和です。
水を二つに分ける噴水
鉢を積み重ねた噴水を想像してください。水はいちばん上の鉢に落ち、左右に半分ずつあふれて、下の段の二つの鉢に落ちます。それぞれの鉢もまた左右に半分ずつあふれ、以下同じように続きます。
三段目の真ん中の鉢は、左の鉢から $\frac14$、右の鉢から $\frac14$、合わせて $\frac24$ を受けとります。四段目の鉢は $\frac18,\frac38,\frac38,\frac18$ を受けとります。分子はちょうど三角形の各行です。いちばん上の鉢を 0 行目とすると、$n$ 行目の分母は $2^n$ です。水は少しも失われないので、どの段も合計すると $1$ になります。
これで、この表の最も有名な性質が説明できます。$n$ 行目の和は $2^n$ です。
$$1+5+10+10+5+1=32=2^5.$$理由は、ある行の各数が次の行で二回使われるからです。一回は左下で、もう一回は右下で。だから次の行の和は二倍になります。$1$ から始めて $n$ 行進むと、和は $2^n$ になります。
斜めに隠れた数
三角形を斜めに読んでみましょう。一本目の斜めの列はすべて $1$ です。二本目は $1,2,3,4,5,\dots$、自然数です。三本目は $1,3,6,10,15,\dots$、三角数で、三角形に並べられる玉の個数です。四本目は $1,4,10,20,35,\dots$、三角錐に積める玉の個数です。
パスカルはこれらの斜めの列をすべて知っていて、それだけを扱った文章をラテン語で書きました。Numeri figurati、「図形数」です。
練習:6 行目を作り、和を確かめましょう
$1,5,10,10,5,1$ の行の隣どうしを足すと、$1,6,15,20,15,6,1$ になります。和は $64=2^6$ です。
練習:鉢の噴水で、七段目の三番目の鉢にはどれだけの水が届きますか?
いちばん上の鉢が $0$ 行目なので、七段目は $6$ 行目、三番目の鉢は位置 $2$ です。割合は $\dfrac{C(6,2)}{2^6}=\dfrac{15}{64}$、水全体の約 23% です。
出典: パスカルの伝記、MacTutor · カラジー、MacTutor · 楊輝、MacTutor。