次の短い証明を読んでほしい。

命題。 二つの偶数の和は偶数である。

証明。 $m$ と $n$ を偶数とする。このとき、$m=2a$、$n=2b$ となる整数 $a$、$b$ が存在する。ゆえに $m+n=2a+2b=2(a+b)$。$a+b$ は整数だから、$m+n$ は偶数である。$\blacksquare$

計算を取り除くと、ことばの骨組みが残る。とする、このとき〜が存在する、ゆえに、だから、そして最後の小さな黒い四角。どれも計算するという意味での数学ではないが、どれも欠かせない。それぞれの行が何をしているのか――対象を導入する、帰結を引き出す、事実を持ち出す、締めくくる――を読み手に告げるのは、これらのことばなのだ。

ユークリッドの六つの部分

ギリシア人はすでに決まった構造で証明を書いていた。5 世紀の哲学者プロクロスは、『原論』の注釈で、ユークリッドの命題の六つの部分を記述している。

部分(ギリシア語) 役割 上の証明では
prótasis、言明 何を証明するかを一般的に述べる 「二つの偶数の和は偶数である」
ékthesis、提示 一つの場合を選び、名前をつける 「$m$ と $n$ を偶数とする」
diorismós、特定 その場合について何を証明したいかを言う (暗黙)「$m+n$ は偶数」
kataskeué、構成 必要なものを付け加える 「$m=2a$、$n=2b$ となる $a$、$b$ が存在する」
apódeixis、論証 帰結をつなげる 「$m+n=2(a+b)$」
sympérasma、結論 一般的な言明に戻る 「$m+n$ は偶数である」

いちばん巧妙なのは提示だ。言明はすべての偶数について語っている。提示はそのうち二つ、$m$ と $n$ を選び、まるで特定の数であるかのように扱う。しかし偶数であること以外に何も仮定していないので、$m$ と $n$ について証明したことはどんな偶数についても成り立つ。「とする」ということばは、一般と特殊をつなぐ橋なのだ。これは第3章の一般化する文字が、証明の中で働きはじめた姿である。

示すべきことであった

ユークリッドはどの命題も決まり文句で締めくくった。hóper édei deîxai、「これが示すべきことであった」。命題が作図の場合、たとえば第1章で紹介した正三角形の作図のような場合には、決まり文句は hóper édei poiêsai、「これがなすべきことであった」に変わる。ラテン語の翻訳者たちは二つを quod erat demonstrandum と quod erat faciendum と訳し、Q.E.D. と Q.E.F. と略した。

20 世紀、ハンガリー生まれのアメリカの数学者ポール・ハルモスは、これらの文字を一つの記号に取り替えた。小さな黒い四角 $\blacksquare$ である。雑誌が記事の終わりを示すのに使っていたしるしから思いついたと、彼は語っている。読者はこの記号を墓石(tombstone)、あるいは単にハルモスと呼ぶ。ハルモスは英語の略語 iff(if and only if、「〜のときかつそのときに限り」)も広めた。

もっと古く、今ではあまり使われない記号に $\therefore$、「ゆえに」がある。これは 1659 年、スイスのヨハン・ラーンの『ドイツ代数学』に現れ、のちに英語の本で、逆さまにした兄弟 $\because$、「なぜなら」が加わった。これらはどんな数学的対象も表さない。表しているのは推論の動きである。

開くことば、閉じることば

証明のことばの中には、括弧のように働くものがある。最大の偶数は存在しないことの古典的な証明を見てみよう。

証明。 背理法で、最大の偶数 $N$ が存在すると仮定する。すると $N+2$ も偶数で、$N+2>N$ である。これは $N$ の選び方に矛盾する。ゆえに、最大の偶数は存在しない。$\blacksquare$

「仮定する」は、正しくない仮の仮定を開く。その内側では、そのような $N$ が存在する。「矛盾」がその仮定を閉じ、続く「ゆえに」はもう外側にあって、そこには $N$ はもう存在しない。括弧の中では文字 $N$ に意味があり、外では意味がない。これはまさに第3章で和や積分について調べた束縛された文字の有効範囲であり、それが文全体に適用されているのだ。

こうした開きと閉じに気づかずに証明を読む人は迷子になる。上の証明を正しい主張の列として読む生徒は、$N$ という名の最大の偶数が存在すると考え、そのあと矛盾に戸惑う。20 世紀の論理学は、ゲルハルト・ゲンツェンとともに、証明を木として描いた。それぞれの仮定がどこで開きどこで閉じるかを目に見えるようにするためである。

練習:六つの部分で書く

二つの奇数の和は偶数であることを、部分を示しながら証明せよ。

言明: 二つの奇数の和は偶数である。提示: $m$ と $n$ を奇数とする。特定: $m+n$ が偶数であることを示したい。構成: $m=2a+1$、$n=2b+1$ となる整数 $a$、$b$ が存在する。論証: $m+n=2a+2b+2=2(a+b+1)$。結論: $a+b+1$ は整数だから、$m+n$ は偶数である。$\blacksquare$

練習:どこで開き、どこで閉じるか

次の証明で、仮の仮定がどこで始まりどこで終わるかを示せ。

$\sqrt2=\frac pq$ で、分数は既約であると仮定する。すると $p^2=2q^2$ なので $p^2$ は偶数であり、$p$ も偶数で、$p=2r$。すると $4r^2=2q^2$、$q^2=2r^2$ となり、$q$ も偶数である。しかしそれでは $p$ と $q$ が共通の因数 $2$ をもち、分数の選び方に反する。ゆえに $\sqrt2$ は分数ではない。

仮定は「仮定する」で開き、「分数の選び方に反する」で閉じる。そのあいだにあるもの、$p$、$q$、$r$ はすべて、括弧の中にしか存在しない。最後の「ゆえに」は外側にあり、それらの文字を一つも使わずに正しいことを述べている。


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