点とは部分をもたないものである。線とは幅のない長さである。

— ユークリッド『原論』第一巻、定義 1 と 2

三角形の角の和がいつも 180° になることを、疑いの余地なくだれかに納得させたいとしましょう。測るだけでは足りません。分度器には誤差があり、測れる三角形もいくつかにすぎません。必要なのは 論証 です。けれども、どんな論証もどこかから出発します。どこから出発すればよいのでしょう。どの主張も別の主張で正当化しなければならず、その主張もまた別の主張で、となれば、鎖は決して終わりません。

ユークリッドの解決は、最初のページで、どこから出発するのかを正確に宣言することでした。ほかのことはすべて証明しなければならないのです。

三つの部品

『原論』第一巻は三つのリストで始まります。

  • 定義(第一巻に 23):何について話すのかを述べる。「点とは部分をもたないものである」。「円とは一本の線に囲まれた平面図形で、その内部の一点からその線へ引いたすべての直線が等しいものである」。
  • 公準(5):幾何学で何ができるかについて、読者に認めてもらうこと。
  • 公理(共通概念、5):幾何学にかぎらず、どんな量についても成り立つ一般的な真理。

五つの 公準 を意訳すると、

  1. 任意の点から任意の点へ直線を引くことができる。
  2. 有限の直線を連続して一直線に延長することができる。
  3. 任意の中心と任意の半径で円を描くことができる。
  4. すべての直角はたがいに等しい。
  5. 一本の直線が二本の直線と交わり、同じ側の内角の和が二直角より小さいならば、その二本の直線を限りなく延長すると、その側で交わる。

最初の三つは、目盛りのない定規 と コンパス でできること、つまり直線を引く、延長する、円を描くことを述べています。『原論』のすべての作図は、この二つの道具だけを使います。四つ目は直角が標準の尺度であることを保証します。五つ目はほかよりも長く、自明さも劣ります。これが有名な 平行線公準 です。

五つの 公理 は、

  1. 同じものに等しいものは、たがいに等しい。
  2. 等しいものに等しいものを加えれば、全体は等しい。
  3. 等しいものから等しいものを引けば、残りは等しい。
  4. たがいに重なりあうものは、たがいに等しい。
  5. 全体は部分より大きい。

一つ目は、今日なら「$a=c$ かつ $b=c$ ならば $a=b$」と書くことです。これは 最初の命題 でさっそく使われます。

十三巻の地図

巻 内容
I 三角形、平行線、ピタゴラスの定理
II 幾何学的代数:長方形と正方形の面積
III、IV 円と内接多角形
V エウドクソスの比例論
VI 相似な図形
VII〜IX 数論:最大公約数、素数、完全数
X $\sqrt2$ のような通約できない量
XI〜XIII 立体幾何学と五つの正多面体

本は、正多面体がちょうど 五つ、正四面体、立方体、正八面体、正十二面体、正二十面体しかないことを証明して終わります。プラトンはそれらを自然の元素と結びつけていて、本全体がそこにたどりつくために書かれたと考える人もいます。

円と取り尽くし法

第 12 巻は、とても古い問いに答えています。円の面積はいくらか。エジプト人にはやり方がありました。紀元前 1550 年ごろのリンド・パピルスでは、直径 9 の丸い畑の面積は一辺 8 の正方形の面積とされており、これは $\pi\approx\frac{256}{81}\approx3.16$ を使うのと同じです。聖書では、ソロモンの神殿の大きな青銅の「海」は「縁から縁まで十アンマ」で、「周囲は縄で測ると三十アンマ」でした(列王記上 7 章 23 節)。そこでは $\pi=3$ です。

ユークリッドは数値をまったく示しません。命題 XII.2 で、二つの円の面積の比は、直径の上の正方形の比に等しいことを証明します。今日の言葉で言えば、面積は $kd^2$ で、定数 $k$ はすべての円で同じです。エウドクソスにさかのぼるこの証明では、円に正方形を内接させ、次に正八角形、次に正十六角形、と続けます。正方形だけで円の半分より多くを占め、辺の数を 2 倍にするたびに、多角形は残りの半分より多くを覆います。残りは、与えられたどんな量よりも小さくなります。これが取り尽くし法です。無限について語ることなく、図形を多角形で取り尽くすのです。

その少しあと、アルキメデスは同じ方法で、円の内側と外側の正 96 角形を使い、$3\frac{10}{71}<\pi<3\frac17$、すなわち $3.1408<\pi<3.1429$ を示しました。文字 $\pi$ が現れたのは 1706 年になってからで、オイラーによって広まりました。

依存関係の鎖

『原論』を特別なものにしているのは順序です。命題 I.1 は定義、公準、公理だけを使います。I.2 は I.1 も使います。ピタゴラスの定理 I.47 は I.4、I.14、I.41、I.46 を使い、それらはまた別の命題を使います。第十三巻の最後の定理から、一つひとつがほかに支えられた命題の鎖をたどって、五つの公準まで戻ることができるのです。

練習問題:AB = CD かつ CD = EF ならば AB = EF、という結論を正当化するのはどの公理か?

一つ目 です。同じものに等しいものは、たがいに等しい。ここでは $AB$ も $EF$ も $CD$ に等しいのです。今日では、等号のこの性質を 推移律 と呼びます。

練習問題:定規とコンパスで、線分 AB の中点をどうやって見つけるか?

$A$ を中心とする円と $B$ を中心とする円を、どちらも半径 $AB$ で描きます。二つの円は $AB$ の両側の二点 $C$ と $D$ で交わります。直線 $CD$ は $AB$ を中点 $M$ で切ります。なぜでしょう。$ACBD$ の四辺はすべて $AB$ に等しいのでひし形であり、ひし形の対角線はたがいを二等分するからです。これが命題 I.10 で、公準 1 と 3 でできます。

出典: ユークリッド『原論』第一巻、D. E. Joyce 版 · Thomas L. Heath、The Thirteen Books of Euclid’s Elements(Dover、1956)· 用語と最初の証明については、このサイトの 『原論』の基礎のセクション も参照。


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