1675 年 10 月 29 日、ライプニッツはパリで面積の問題に取り組んでいました。それまで彼は、イタリアのカヴァリエリにならって、図形のすべての線の和を表すのに omn.(ラテン語 omnia「すべて」の略)と書いていました。ページの途中で、彼はこう書きました。

omn. のかわりに ∫ と書くと便利だろう。

— ライプニッツ、1675 年 10 月 29 日の手稿

記号 $\int$ は、summa(和)の頭文字である長い S です。当時、長い s は手書きではふつうの文字でした。それ以来、この記号が取って代わられたことは一度もありません。

薄切りを足し合わせる

ライプニッツの考えは、領域をごく細い縦の薄切りに分けることでした。一枚一枚はほとんど高さ $y$、幅 $dx$ の長方形で、面積は $y\,dx$。全体の面積はすべての薄切りの和です。

$$\int y\,dx.$$

この記号は一度にすべてを語ります。高さ($y$)に微小な幅($dx$)を掛けたものを全部足せ($\int$)。和の範囲は下と上に書きます。$\displaystyle\int_a^b f(x)\,dx$ は $x=a$ から $x=b$ までの薄切りの和です。

差を足し合わせると全体に戻る

伝記で紹介した、ホイヘンスがライプニッツに出した問題を覚えていますか? そこでは差の和がほとんど打ち消し合いました。

$$(F_1-F_0)+(F_2-F_1)+(F_3-F_2)+\cdots+(F_n-F_{n-1})=F_n-F_0.$$

ある量の小さな変化をすべて足し合わせると、残るのは全体の変化、つまり最後の値から最初の値を引いたものだけです。ライプニッツは、無限に小さな差でも同じことが起こると気づきました。$dF=f(x)\,dx$ なら、

$$\int_a^b f(x)\,dx=\int_a^b dF=F(b)-F(a).$$

言いかえれば、$\int$ と $d$ は互いを打ち消し合うのです。足し算と引き算のように。これが微積分の基本定理を、もっとも短く書いたものです。ニュートンは流率の道を通って同じ結論に達しました。

例:放物線の下の面積

$y=x^2$ の $0$ から $3$ までの面積を求めるには、$dF=x^2\,dx$ となる $F$ を探します。$d\!\left(\frac{x^3}{3}\right)=x^2\,dx$ なので、

$$\int_0^3x^2\,dx=\frac{3^3}{3}-\frac{0^3}{3}=9.$$

例:進んだ距離

ある車が速度 $v(t)=3t^2$ メートル毎秒で加速しています。小さな時間 $dt$ ごとに $v\,dt$ だけ進みます。$t=0$ から $t=2$ 秒までの全体の距離は

$$\int_0^2 3t^2\,dt=\Big[t^3\Big]_0^2=8\ \text{メートル}.$$

単位が検算の助けになります。速度(m/s)× 時間(s)はメートルです。ライプニッツの記号は単位もいっしょに運んでくれます。物理学や工学で広く使われている理由の一つです。

注意:速度の符号が変わる、つまり車がバックするなら、積分が与えるのは変位、つまり最後の位置から最初の位置を引いたものです。進んだ総距離を求めるには、速度の絶対値を積分します。

パスカルが見なかった三角形

1673 年、パリに着いたばかりのライプニッツは、『A. デトンヴィルの書簡』に収められた、四分円の正弦についてのブレーズ・パスカルの文章を読みました。パスカルは円の一点に、一辺が水平、一辺が垂直、もう一辺が曲線に沿った、ごく小さな三角形を描いていました。

ライプニッツは、この三角形が円だけでなくどんな曲線にも使えることに気づきました。その辺は $dx$、$dy$、そして曲線そのものの小さな一片 $ds$ です。直角三角形なので、ピタゴラスの定理から

$$ds^2=dx^2+dy^2.$$

彼はこれを特性三角形と呼び、のちに、パスカル自身が見逃した光をここで見たと語っています。この三角形を使えば、ライプニッツは接線(傾きは $dy/dx$)も、曲線の長さも求められました。$ds$ を全部足せばよいのです。

$$L=\int ds=\int_a^b\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}\,dx.$$

たとえば、$x=0$ から $x=3$ までの $y=\frac23x^{3/2}$ では $\dfrac{dy}{dx}=\sqrt x$ で、長さは

$$L=\int_0^3\sqrt{1+x}\,dx=\Big[\tfrac23(1+x)^{3/2}\Big]_0^3=\tfrac23(8-1)=\tfrac{14}{3}.$$

です。記号が仕事をしてくれます。ライプニッツの $ds$ は斜辺で、積分はそのすべての和なのです。

最初の発表

ライプニッツは 1686 年、『学術紀要』の『隠された幾何学について』という論文で記号 $\int$ を発表しました。そこで彼は、別々に見える面積と接線という二つの問題が、同じコインの表と裏であることを示しました。

練習:0 から 3 までの 2x + 1 の積分を計算せよ

$d(x^2+x)=(2x+1)\,dx$ なので、原始関数の一つは $x^2+x$。積分は $(9+3)-(0+0)=12$。関数はこの区間で正なので、この数はグラフの下の面積でもあります。

練習:蛇口から毎分 4t リットルの水が出る。t = 0 から t = 5 分までにどれだけたまるか?

$\displaystyle\int_0^5 4t\,dt=\Big[2t^2\Big]_0^5=50$ リットル。

資料: ライプニッツの手稿と出版物、MacTutor。


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