グラフの目盛り:絵が嘘をつくとき
棒グラフは説明がいらないように見える。棒が高いほど数が大きい。第2章の言葉で言えば、これはイコンであり、高さが量に似ている。しかしどのグラフの背後にも、目には読めない約束事がある。目盛りである。約束事が変わっても、イコンは同じ自信をもって語り続ける。ただ、語っている内容は別のものになっている。
切り詰められた軸
ある会社の四年間の売上は $96$、$98$、$101$、$104$ である。控えめな成長で、三年で $8.3\%$ だ。では縦軸を $0$ ではなく $95$ から始めて棒グラフを描いてみよう。最初の棒の高さは $1$、最後の棒は $9$ になる。最後の棒は最初の棒の九倍に見える。
グラフはどの数についても嘘をついていない。数はすべてそこに書いてある。嘘をついているのは数どうしの関係についてであり、それこそ棒グラフが示すと約束しているものなのだ。1954 年、アメリカのジャーナリスト、ダレル・ハフは『統計でウソをつく法』でこの手口を「ギーウィズ・グラフ」(gee-whiz graph、「うわっ」グラフ)と呼んだ。この本はいまも統計学の授業の必読書である。
棒グラフの規則は簡単だ。棒は長さを比べるので、ゼロから始めなければならない。折れ線グラフは事情が違う。変化を示すものなので、目盛りがはっきり書かれ、線の高さを大きさの尺度として読ませないかぎり、軸をデータの近くから始めてよい場合がある。
対数目盛り
わざとゆがめた目盛りもある。しかも善意からである。細菌の数や流行初期の感染者数のように、一定の期間ごとに倍になる量は爆発的に増えるので、普通のグラフでは最初の値は地面に張りつき、最後の値はページからはみ出してしまう。
対数目盛りでは、縦軸の目盛りは $0, 10, 20, 30$ ではなく $1, 10, 100, 1000$ である。同じ長さだけ進むごとに 10 がかけられる。すると指数的な成長は直線になり、その傾きが倍になる速さを表す。2020 年には多くの新聞が流行の曲線を両方の目盛りで示し、多くの読者が、同じデータが爆発にも穏やかな坂にも見えうることを知った。
対数目盛りは、学ばなければならない記号のよい例である。目は高さを量として読む。対数目盛りでは、高さが表すのは桁である。約束事が変わったことに気づかない人は、グラフを読み違える。
枠の縦横比
軸がゼロから始まり、目盛りが普通のものであっても、枠の形が印象を変える。同じデータが、横に長く低い長方形では穏やかに見え、縦に細長い長方形では急上昇しているように見える。統計学者ウィリアム・クリーブランドは実用的な規則を提案した。重要な傾きが $45°$ に近くなるように縦横比を選ぶことである。それが、目が傾きの差をもっともよく見分けられる角度だからだ。
練習:軸による誇張
軸が $90$ から始まるとき、$104$ の棒は $96$ の棒の何倍に見えるか。$100$ から始まるときはどうか。
軸が $90$ から始まると、見える高さは $104-90=14$ と $96-90=6$ であり、最後の棒は $\frac{14}{6}\approx2.3$ 倍に見える。軸が $100$ から始まると、$96$ の棒はまったく現れず、$104$ の棒の高さは $4$ になる。グラフは意味を失う。本当の比はいつも $\frac{104}{96}\approx1.08$ である。
練習:対数目盛りの直線
ある個体数が毎日倍になる。$1, 2, 4, 8, 16, \ldots$ 底が $10$ の対数目盛りでは、高さは毎日どれだけ上がるか。
高さは値の $\log_{10}$ であり、$\log_{10}(2^n)=n\log_{10}2\approx0.301\,n$ である。高さは毎日 $0.301$ 単位上がる。毎日同じだけ上がるので、グラフは直線になる。ちょうど 1 単位、つまり 10 倍上がるには約 $3.3$ 日かかる。
章の目次 · ← 命を救ったグラフ:プレイフェア、スノウ、ナイチンゲール、ミナール · アルガン平面:居場所を見つけた虚数 →