ニュートンとライプニッツは十七世紀に積分法を発明したが、長いあいだ、積分とは何かを正確に定義しようと気にかける人はいなかった。ふつうの関数については、積分は微分の逆か、曲線の下の面積であり、それで十分だったのである。

奇妙な関数

十九世紀のはじめ、事情が変わった。フーリエは、飛びや角のあるきわめて不規則な関数でもサインとコサインの和で書けることを示し、その和の係数は積分で与えられた。しかし、飛びだらけの関数を積分するとはどういう意味なのか。コーシーは連続関数について最初の定義を与えた。リーマンの師ディリクレは 1829 年に、まったく積分できない関数を見つけた。有理数で 1、無理数で 0 をとる関数である。

リーマンは、三角級数についての 1854 年の教授資格論文でこの問題に取り組んだ。どの関数がフーリエ級数で書けるかを知るには、まずどの関数が積分できるのかを正確に知る必要があったのである。

定義

リーマンの考えは単純である。区間 $[a, b]$ で $f$ を積分するには

  1. 区間を $[x_0, x_1], [x_1, x_2], \ldots, [x_{n-1}, x_n]$ に切る。ただし $x_0 = a$、$x_n = b$ とする。
  2. 各小区間で任意の点 $\xi_i$ を選ぶ。
  3. 底辺 $x_i - x_{i-1}$、高さ $f(\xi_i)$ の長方形の面積の和をつくる。
$$S = \sum_{i=1}^{n} f(\xi_i)\,(x_i - x_{i-1}).$$

小区間をすべてごく細くしたとき、小区間と点の選び方にかかわらず、この和がただ一つの数に近づくならば、その数が積分である。

$$\int_a^b f(x)\,dx = \lim S.$$

点の選び方によらないという要求が、定義の核心である。図で、各帯で選ぶ点と帯の数を変えてみよう。

どの関数が積分可能か

リーマンは判定法も与えた。各帯で関数はある最小値と最大値のあいだを動き、その差がその帯での関数の振幅である。振幅に帯の幅を掛けて足した和をいくらでも小さくできるとき、関数は積分可能である。連続関数はすべてこの検査に合格し、飛びのある関数の多くも合格する。飛びが「多すぎ」なければよいのである。

ディリクレの関数は不合格である。どんなに小さな帯にも有理数と無理数があり、振幅はつねに 1 になる。和は選んだ点によって 1 か 0 になり、ただ一つの極限はない。

練習:x² の左端の和

$[0, 1]$ を $n$ 等分し、各帯の左端の点を使って $f(x) = x^2$ のリーマン和を求め、それが $\frac{1}{3}$ に近づくことを示せ。

帯の幅は $\frac{1}{n}$、$i$ 番目の帯の左端は $\frac{i-1}{n}$ である。和は

$$S_n = \sum_{i=1}^{n}\left(\frac{i-1}{n}\right)^2\frac{1}{n} = \frac{1}{n^3}\sum_{k=0}^{n-1}k^2 = \frac{(n-1)n(2n-1)}{6n^3}.$$

$n$ が大きくなると、これは $\frac{2n^3}{6n^3} = \frac{1}{3}$ に近づく。$n = 10$ なら $S_{10} = \frac{9 \cdot 10 \cdot 19}{6000} = 0.285$ である。

練習:階段関数

$x < \frac{1}{2}$ で $f(x) = 0$、$x \ge \frac{1}{2}$ で $f(x) = 1$ とする。$f$ が $[0, 1]$ で積分可能であることを示し、積分を求めよ。

関数が振動するのは $\frac{1}{2}$ を含む帯だけで、そこでの振幅は 1 である。$n$ 等分したとき、振幅と幅の積の和は高々 $2 \cdot \frac{1}{n}$($\frac{1}{2}$ が二つの帯の境目にくる場合)で、これはゼロに近づく。よって $f$ は積分可能である。和はすべて、底辺 $\frac{1}{2}$、高さ 1 の長方形の面積に近づく。積分は $\frac{1}{2}$ である。

出典: Bernhard Riemann、「Über die Darstellbarkeit einer Function durch eine trigonometrische Reihe」(1854 年の教授資格論文、1867 年刊) · Thomas Hawkins、Lebesgue’s Theory of Integration: Its Origins and Development(1970) · Detlef Laugwitz、Bernhard Riemann 1826–1866(1999)。


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