アニェージの曲線
自分の名がついた曲線を、アニェージが発見したわけではない。しかしこの曲線が知られるようになったのは彼女の本を通じてだった。彼女はこれを、幾何学的な作図から方程式へ移る方法の例として使った。それこそがデカルトの新しい方法の約束していたことである。
作図
直径 $OM = a$ の円を、$O$ を下、$M$ を上にして描き、$M$ で円に接する直線を引く。そして
- 接線の上に任意の点 $N$ をとる。
- 直線 $ON$ を引く。これは円と点 $A$ で交わる。
- 曲線の点 $P$ は、$N$ を通る縦の線と、$A$ を通る横の線の上にある。
$N$ を接線にそって動かすと、点 $P$ は釣鐘の形の曲線をえがく。
方程式
$O$ を原点におき、$y$ 軸を直径にそってとる。円の中心は $\left(0, \frac{a}{2}\right)$、半径は $\frac{a}{2}$ だから
$$x^2 + \left(y - \frac{a}{2}\right)^2 = \frac{a^2}{4} \quad\Longleftrightarrow\quad x^2 + y^2 = ay.$$$M$ での接線は直線 $y = a$ で、点 $N$ は $(n, a)$ である。直線 $ON$ 上の点は $(tn, ta)$ の形をしている。円の方程式に代入すると
$$t^2 n^2 + t^2 a^2 = a \cdot ta \quad\Longrightarrow\quad t = \frac{a^2}{n^2 + a^2}.$$ここで $O$ そのものにあたる解 $t = 0$ は除いた。したがって点 $A$ の高さは $ta = \frac{a^3}{n^2 + a^2}$ である。点 $P$ は $N$ と同じ横座標と $A$ と同じ高さをもつから、$n$ を $x$ と書きかえて
$$y = \frac{a^3}{x^2 + a^2}.$$書きうるもっとも簡単な曲線のひとつである。$a = 1$ なら $y = \frac{1}{1 + x^2}$ となる。
釣鐘の形
方程式は、図が示していることをすべて語っている。
- $x$ は二乗でしか現れないから、曲線は左右対称である。
- $x = 0$ のとき分母がいちばん小さくなるから、もっとも高い点は $(0, a)$、すなわち $M$ そのものである。
- $x$ が大きくなると $y$ は小さくなり、ゼロに近づくが、けっしてゼロにはならない。$x$ 軸は漸近線である。$x$ が大きいとき $y \approx \frac{a^3}{x^2}$ で、逆二乗のように減っていく。
持ち主の多い曲線
ピエール・ド・フェルマーは十七世紀の半ばにすでにこの曲線を知っていた。アイザック・ニュートンは同じ作図を手稿に記したが、それが出版されたのは 1779 年になってからである。1703 年、ピサの数学者で修道士のグイド・グランディが幾何学的な作図を示し、1718 年に名前を提案した。ラテン語で versoria、イタリア語で versiera といい、船の帆を回す綱を指す言葉である。アニェージは 1748 年の『解析教程』第一巻でこの曲線を扱い、la versiera と呼んだ。
練習:曲線上のいくつかの点
$a = 2$ のとき、$x = 2$ での曲線の高さを求めよ。また、曲線の高さが最大値の半分になる $x$ の値を求めよ。
$a = 2$ なら $y = \frac{8}{x^2 + 4}$ である。$x = 2$ では $y = \frac{8}{8} = 1$。最大の高さは $a = 2$ で、その半分は 1 である。$\frac{8}{x^2 + 4} = 1$ を解くと $x^2 = 4$、$x = \pm 2$。一般に、曲線は $x = \pm a$ で半分の高さになる。釣鐘の「半値幅」は $2a$、つまり円の直径の二倍である。
練習:角度を使った方程式
直線 $ON$ と直径 $OM$ のなす角を $\theta$ とする。点 $P$ が $(a \tan\theta,\ a\cos^2\theta)$ であることを示せ。
点 $N = (x, a)$ は高さ $a$、軸からの水平距離 $x$ のところにあるから、$\tan\theta = \frac{x}{a}$、$x = a\tan\theta$ である。すると
$$y = \frac{a^3}{a^2\tan^2\theta + a^2} = \frac{a}{1 + \tan^2\theta} = a\cos^2\theta.$$ここで $1 + \tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}$ を使った。$\theta$ が $-90°$ から $90°$ まで動くと、点 $P$ は曲線全体をたどる。
出典: Maria Gaetana Agnesi、Instituzioni analitiche ad uso della gioventù italiana、第 I 巻(1748)、第 I 部 · Guido Grandi、Quadratura circuli et hyperbolae(1703)および Note al trattato del Galileo del moto naturale accelerato(1718) · John Colson(訳)、Analytical Institutions、John Hellins 編(1801) · Clifford Truesdell、「Maria Gaetana Agnesi」、Archive for History of Exact Sciences 40(1989)。