等号は天秤であって矢印ではない
□ に入る数は何でしょうか。
$$8+4=\square+5$$1990 年代の終わり、アメリカの研究者カレン・フォークナー、リンダ・リーヴァイ、トマス・カーペンターは、1 年生から 6 年生の子どもたちにこの問題を出しました。どの学年でも、$7$ と答えたのは十人に一人もいませんでした。いちばん多かった答えは $12$ と $17$ でした。
$12$ と答えた子は、$8+4$ を計算して、いつものように $=$ のあとに答えを書きました。$17$ と答えた子は、見えた数を全部たしました。どちらのグループも計算はまちがえていません。等号の読み方をまちがえたのです。
矢印か、天秤か
多くの生徒にとって、$=$ は「答えは」という意味です。電卓が教える読み方です。$8$、$+$、$4$ と押して $=$ のキーを押すと、電卓は計算をして答えを表示します。この読み方では、等号は矢印です。左に問い、右に答えがあり、計算は一方向にしか進みません。
けれども、レコードが 1557 年にかいたのはそういうものではありませんでした。同じ長さの二本の平行線は、二つのものが同じ値をもつと言っているのです。等号は天秤です。皿はつりあっていて、どちらが左にあってもかまいません。
天秤として読めば、答えはすぐに出ます。左の皿の重さは $12$ なので、右の皿も $12$ でなければならず、そのためには $7$ 足りません。□ に $12$ を書くと $8+4=12+5$、つまり $12=17$ になり、天秤はかたむいてしまいます。
天秤の読み方は、$7=3+4$ が $3+4=7$ と同じように正しい理由も、$3+4=5+2$ が「答え」をまったくふくまないのに完全に正しい文である理由も説明してくれます。数学のことばで言えば、等号は対称な関係です。$A=B$ なら $B=A$ なのです。
記号を一つずつ読む方程式
代数を可能にしているのは、天秤の読み方です。第 1 章の方程式「ある量にその半分を加えると五になる」にもどりましょう。
$$x+\frac{x}{2}=5.$$急いで読むと「$x$ とその半分をたすと五」となります。記号論的に読むなら、一つずつの記号を見ます。
- $x$ はただの数ではありません。未知数であり、等式が選びだす値のためにとっておかれた場所です。
- $\frac x2$ の分数の横線は、かっこなしでまとめています。半分にするのは $x$ 全体です。
- $+$ は二つの量、$x$ 全体とその半分を結びます。
- $=$ は何かを計算せよと命じているのではありません。二つの皿が同じ重さだと主張しているのであり、ただ一つの $x$ の値だけがみたす条件なのです。
方程式を解くとは、天秤がつりあったままになるような操作を、両方の皿に行うことです。
$$x+\frac x2=5 \iff \frac{3x}{2}=5 \iff 3x=10 \iff x=\frac{10}{3}.$$記号 $\iff$ は、どの一歩も元にもどせることを示しています。両辺に $2$ をかけ、$3$ でわっても、解を失うことも、解を作りだすこともありません。$2$ も $3$ もゼロではないからです。検算が一回りを閉じ、書かれたものを問題に結びなおします。
$$\frac{10}3+\frac12\cdot\frac{10}3=\frac{10}3+\frac53=\frac{15}3=5.$$同じ条件を、別の図で
この文は線分図にも訳せます。$x$ の半分を一つの部分とすると、$x$ 全体はそれと等しい二つの部分です。合わせると、$x$ とその半分は等しい三つの部分になり、その三つで $5$ です。
一つの部分は $\frac53$ で、二つの部分からなる $x$ は $\frac{10}3$ です。図は $3$ がどこから来るかを一目で見せてくれます。方程式はそれを分数のたし算の中に隠してしまいますが、そのかわり $5$ のところにどんな数を入れても使えます。文はどちらも見せてくれませんが、何について話しているのかを言っているのは文だけです。それぞれの表現が、同じ問題の一部を照らしているのです。
練習問題:□ に入る数は?
左辺は $8$ です。右辺も $8$ になるには、□ は $11$ でなければなりません。$11-3=8$ だからです。等号を矢印と読む人は $8$ と書いてしまい、天秤は $8=5$ になります。
練習問題:つながった等号を直す
計算の考え方は変えずに、$5\cdot3=15+2=17$ という書き方を直します。正しい形は二通りあります。
$$5\cdot3+2=15+2=17,$$のように、どの等号も本当に等しい式どうしを結ぶようにするか、二行に分けて $5\cdot3=15$、$15+2=17$ と書くかです。