変数:動く文字
たえず増加または減少する量を変量と呼ぶ。反対に、ほかの量が変わるあいだ同じままである量を定量と呼ぶ。
— ロピタル侯爵『無限小解析』(1696)、定義 I
未知数は止まっている文字です。値を隠していて、その値は変わりません。変数は動く文字です。$y=x^2-4x+3$ では、「$x$ はいくつか」とはだれも問いません。問われるのは別のことです。「$x$ が変わると、$y$ はどうなるか」。
方程式から曲線へ
一方の考えから他方への移行は 17 世紀に起こりました。1637 年ごろ、デカルトとフェルマーが方程式と曲線を結びつけると、$y=x^2$ のような二つの文字をもつ方程式は、答えが一つではなく無限にあることになりました。放物線をつくるすべての組 $(x,y)$ です。$x$ は探されるものではなく、たどられるものになりました。それぞれの位置について、方程式は $y$ がどこにあるかを告げます。
流れる量
ニュートンはこの考えに物理的なイメージを与えました。彼にとって変数とは、動く物体の位置のように、時間とともに流れる量で、彼はそれを流量(fluent)と呼びました。それが流れる速さが流率(fluxion)です。ライプニッツは quantitas variabilis(変わる量)と言い、最初の微分積分学の教科書、1696 年のロピタルの本は、このページの冒頭に引いた定義で始まります。変数は増えたり減ったりし、定数は止まっている、と。
この言葉には運動のイメージがともなっています。だからわたしたちは、まるで文字が歩くかのように、「$x$ が $0$ に近づくとき」「$y$ が増える」「関数が上がる」と言うのです。
一つの文字がもう一つに依存する
二つの変数があると、依存の考えが現れます。1755 年、オイラーは『微分学教程』の序文で、ある量がほかの量に依存していて、後者が変わると前者も変わるとき、前者を後者の関数と呼ぶ、と書きました。$y=x^2-4x+3$ では、
- $x$ は独立変数です。その値は自由に選べます。
- $y$ は従属変数です。その値は規則によって決まります。
この選択は文字の中に書かれてはいません。$A=\pi r^2$ では、ふつう半径を独立と考えますが、「面積が $10$ m² になる半径は?」と問われれば、役割を入れ替えます。$r=\sqrt{A/\pi}$。
ワイエルシュトラスの止まった変数
運動のイメージは便利ですが、問題ももたらしました。$h$ が紙の上の文字にすぎないなら、「$h$ がゼロに近づく」とはどういう意味でしょう。19 世紀、カール・ワイエルシュトラスたちは定義から時間を取り除きました。変数は、ある集合、つまりその定義域の任意の要素で置き換えられる文字にすぎなくなりました。何も動きません。あるのは、ありうるすべての置き換えの集まりだけです。これが、$\varepsilon$ と $\delta$ を使ったコーシーとワイエルシュトラスの極限の定義の背後にある読み方です。
今日では二つのイメージが共存しています。「$x$ がどんどん大きくなると」と言う先生はニュートンの変数を使い、教科書の定義はワイエルシュトラスの変数を使います。記法は同じで、読者は一方から他方へ移れなければなりません。
練習:表から規則を見つける
ある表に $x=0\to y=1$、$x=1\to y=3$、$x=2\to y=5$、$x=3\to y=7$ とあります。$x$ が $1$ 増えると $y$ は $2$ 増え、$x=0$ で $y$ は $1$ です。規則は $y=2x+1$。有限の表は規則を決して証明しないことに注意しましょう。別の規則がこの四点で一致し、$x=4$ で違うこともありえます。表はほのめかし、式は断言します。
練習:どちらがどちらに依存するか
車が時速 $80$ km で走ります。進んだ距離は $d=80t$。「$2.5$ 時間でどれだけ進むか」と問われれば、$t$ が独立変数で、$d=200$ km。「$300$ km 進むのにどれだけかかるか」と問われれば、独立変数は $d$ になり、$t=\frac{d}{80}=3.75$ 時間。式は一つで、依存関係は問いが選ぶのです。
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