面積と積分:流率の逆の道
曲線で囲まれた図形の面積を測ることは、数学でもっとも古い問題の一つです。紀元前 250 年ごろ、アルキメデスは放物線の切片の面積が、その中に描いた三角形の面積の $\frac43$ であることを示しました。天才的な成果ですが、いわばオーダーメイドで、新しい曲線ごとに新しいアイデアが必要でした。
17 世紀には、フェルマー、カヴァリエリ、ウォリスらが、多くの $n$ について $y=x^n$ の下の面積をすでに計算できました。欠けていたのは一般的な規則です。そしてもう一つ欠けていたのが、ニュートンとライプニッツがそれぞれのやり方でたどり着いた洞察でした。面積を求めることと変化率を求めることは、互いに逆の操作である。
面積は増えていく量
曲線 $y=f(x)$ の下で、$0$ からある点 $x$ までの面積を考え、$A(x)$ と書きます。右端を $x$ から $x+h$ まで押し広げると、面積は細い帯の分だけ増えます。
この帯はほとんど高さ $f(x)$、幅 $h$ の長方形です。したがって
$$A(x+h)-A(x)\approx f(x)\cdot h\qquad\Longrightarrow\qquad\frac{A(x+h)-A(x)}{h}\approx f(x).$$帯が細いほど近似はよくなります。極限をとると、
$$A'(x)=f(x).$$ニュートンの言葉で言えば、面積の流率は曲線の高さです。面積は、高さが与える速さでちょうど増えていきます。面積を求めるには、流率が $f$ になる関数を見つければよい。つまり逆向きにたどればよいのです。
厳密にするには、帯を二つの長方形ではさみます。一つはその区間での $f$ の最小の高さ、もう一つは最大の高さをもつ長方形です。$f$ が連続なら、$h\to0$ のときどちらの高さも $f(x)$ に近づき、帯はその間にはさみ込まれます。
『解析について』の規則
1669 年、ニュートンは『解析について』(De analysi)という短い論文を書きました。その第一の規則は、今日の記号で言えば、$y=ax^{m/n}$ の下で $0$ から $x$ までの面積が
$$\frac{an}{m+n}\,x^{(m+n)/n}$$であるというものです。複雑に見えますが、おなじみの規則です。$x^k$ の下の面積は $\dfrac{x^{k+1}}{k+1}$。たとえば $y=x^2$ の $0$ から $2$ まででは、
$$\int_0^2 x^2\,dx=\left[\frac{x^3}{3}\right]_0^2=\frac{8}{3}.$$アルキメデスなら、この数にたどり着くのに一つの証明がまるごと必要でした。この規則なら 1 行です。
面積としての対数
この規則を一般化された二項式と組み合わせて、ニュートンは誰も計算できなかった面積を求めました。双曲線 $y=\dfrac{1}{1+x}$ はべきの和になります。
$$\frac{1}{1+x}=1-x+x^2-x^3+\cdots$$あとは各べきの下の面積を項ごとに求めるだけです。
$$\int_0^x\frac{dt}{1+t}=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}-\frac{x^4}{4}+\cdots$$この面積が自然対数 $\ln(1+x)$ です。$x=0.1$ とすると、4 項で $0.0953083$、正しい値は $0.0953102$ です。
何の役に立つのか
速度を積分すれば移動した距離が、密度を積分すれば質量が、流量を積分すればタンクを満たした体積が得られます。どの場合も、何かが一瞬ごとにどう変化するかがわかっていて、全体でどれだけ変化したかを知りたいのです。微積分は二つの問いを結びつけます。**どう変化するか?**と、**どれだけ変化したか?**です。
練習:0 から 3 までの y = 2x の下の面積を求めよ
$2x$ の原始関数の一つは $x^2$。面積は $3^2-0^2=9$。幾何で確かめると、底辺 3、高さ 6 の三角形で、面積は $\frac{3\cdot6}{2}=9$ です。
練習:ニュートンの規則で、0 から 4 までの y = √x の下の面積を求めよ
$\sqrt x=x^{1/2}$ なので、面積は $\dfrac{x^{3/2}}{3/2}=\dfrac23x^{3/2}$。$0$ から $4$ までで $\dfrac23\cdot8=\dfrac{16}{3}$。
資料: ニュートン・プロジェクトの数学手稿 · MacTutor の伝記。