仮想仕事の原理
どのような力のどのようなつりあいにおいても、力がどのように加えられていようと、正のエネルギーの和は負のエネルギーの和に等しい。
— ヨハン・ベルヌーイ、ピエール・ヴァリニョン宛の手紙(1717 年 1 月 26 日) アルキメデス以来、単純機械にはそれぞれ別の説明がありました。てこは腕の長さの法則にしたがい、斜面はステヴィンが考えた力の分解にしたがい、滑車は綱についての議論に、ねじはまた別の議論にしたがう、というぐあいです。1717 年、ヨハン・ベルヌーイはフランスの友人ピエール・ヴァリニョンへの手紙で、これらの法則がすべて ひとつの原理 の特別な場合であることを示しました。
考え方:ほんの少しだけ動かす つりあって止まっている機械を思いうかべてください。それを、頭のなかだけで、ごくわずかな距離だけ動かします。ただし拘束は守ります。てこは支点のまわりに回り、綱はのびず、ブロックは斜面から離れません。この想像上の変位は、実際には起こらないので 仮想 変位と呼ばれます。
力 $F_i$ がはたらく各点は、力の向きにほんの少し $\delta s_i$ 動きます。積 $F_i\,\delta s_i$ がその力の 仮想仕事 です。ヨハンはこれを エネルギー と呼びました。この言葉が今日に近い意味で現れたのは、これが最初です。原理はこう述べます。
$$\boxed{\ \text{つりあいでは、}\quad\sum_i F_i\,\delta s_i=0\ \text{ がすべての仮想変位について成り立つ。}\ }$$運動を助ける力の仕事は、運動に逆らう力の仕事に等しい。止まっている機械は、無から仕事をつくりだすことはできません。
アルキメデスのてこ てこの支点から距離 $a$ と $b$ のところに、重さ $P_1$ と $P_2$ があります。てこをごく小さな角 $\delta\theta$ だけ回します。$P_1$ の側は $a\,\delta\theta$ 下がり、$P_2$ の側は $b\,\delta\theta$ 上がります。下がる重さは正の仕事を、上がる重さは負の仕事をします。
$$P_1\,a\,\delta\theta-P_2\,b\,\delta\theta=0\quad\Longrightarrow\quad P_1\,a=P_2\,b.$$相似な三角形の図をひとつも使わずに、アルキメデスの法則が出てきます。$\delta\theta$ はただ消えるだけです。
滑車 滑車の組み合わせで、重さ $W$ が $n$ 本の綱で支えられ、人が自由端を力 $F$ で引くとします。重さが $\delta h$ 上がると、$n$ 本の綱はそれぞれ $\delta h$ 短くなり、その分の綱がすべて自由端から出てくるので、自由端は $n\,\delta h$ 動きます。したがって