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スクリュー、鉤爪、鏡

プルタルコスによれば、アルキメデスは工学を一段低い仕事とみなしており、自分の機械について本を一冊も残さなかった。それでも、同時代の人びとのあいだで彼を有名にしたのは機械だった。古代の史料はいくつかの機械を伝えているが、その信頼性には大きな差がある。 アルキメデスのスクリュー 内側に螺旋をもつか、外側に管を螺旋状に巻きつけた傾いた円筒の、下の端を水に浸す。円筒を回すと、水のひとかたまりずつが螺旋のひだに閉じこめられ、一回転ごとに上がっていき、上の端から出てくる。前一世紀の歴史家シチリアのディオドロスは、この発明をアルキメデスのエジプト滞在中のものとしている。エジプトではこの機械がナイル川沿いの畑の灌漑や、鉱山の排水に使われていたという。 もっとも簡単な形のアルキメデスのスクリュー。傾いた円柱に管を螺旋状に巻きつけたもので、1908 年の挿絵。Chambers’s Twentieth Century Dictionary · Wikimedia Commons · パブリックドメイン この装置はもっと古く、アルキメデスは改良したか広めただけだと考える歴史家もいる。いずれにせよ、スクリューはいまも使われている。下水処理場では汚泥を持ち上げるのに使われ、逆向きに回る巨大なものは、落差の小さい川で小さな水力発電所として働いている。 シラクサの防衛 包囲から一世紀もたたないうちに書いたポリュビオスが、もっとも信頼できる史料である。彼によれば、アルキメデスはどんな距離のローマ船にも届くよう、大小さまざまな投石機を用意した。城壁には手のひらの幅ほどの小さな穴をあけ、弓兵が身をさらさずに射られるようにした。そして城壁の上から、大きな石や鉛の塊を船の上に落とす起重機をつくった。 もっとも恐ろしい機械は鉤爪だった。鎖につながれた鉄の鉤をもつ腕で、船首をつかみ、てこのおもりの力で持ち上げてから急に放し、船を転覆させたり沈めたりした。ポリュビオスによれば、マルケルスは苦々しく冗談を言い、アルキメデスは自分の船をひしゃくにして海の水を汲んでいると言ったという。 燃える鏡 アルキメデスが鏡で太陽の光を集めてローマ艦隊に火をつけたという話は、ポリュビオスにもリウィウスにもプルタルコスにも出てこない。ずっと後の著者たちに現れるもので、もっとも詳しい記述は十二世紀のビザンツのヨハネス・ツェツェスによる。現代の実験の結果ははっきりしない。2005 年、MIT の学生たちは、127 枚の平らな鏡を使い、強い日ざしと晴れた空のもとで数分間かけて、30 メートル先にとまっている木の船体に火をつけることに成功した。テレビ番組『怪しい伝説(MythBusters)』は何度も試し、動いている船に対してはこの方法はうまくいかないと結論した。ほとんどの歴史家はこの話を伝説とみなしている。 プラネタリウム キケロによれば、シラクサの戦利品のなかからマルケルスが自分のためにローマへ持ち帰ったのは、ただひとつ、アルキメデスがつくった天球儀だった。太陽、月、惑星の動き、さらには日食や月食まで示すものだったという。アンティキテラ島の近くの難破船から、天体の位置を計算する前二世紀のギリシアの歯車装置が見つかってから、この記述はより信じられるものになった。この装置とアルキメデスの結びつきを示す証拠はないが、こうした機械がギリシアの技術者の手の届くものだったことはわかる。 練習:スクリューの流量アルキメデスのスクリューが毎分 30 回転し、螺旋の一回転ごとに 2 リットルの水を運ぶ。一時間に何立方メートルの水を持ち上げるか。10 m³ の貯水槽を満たすには何回転必要か。 毎分 $30 \times 2 = 60$ リットル、毎時 $60 \times 60 = 3600$ リットル、つまり $3.6$ m³ である。10 m³ = 10 000 リットルには $\frac{10\,000}{2} = 5000$ 回転が必要で、およそ 2 時間 47 分かかる。 練習:てことしての鉤爪鉤爪の腕が船の側で 12 m、おもりの側で 3 m あり、船首が腕の先に 5 トンに相当する力をおよぼすとする。それを持ち上げるにはどれだけのおもりが必要か。 てこの法則により $5 \times 12 = P \times 3$、よって $P = 20$ トンである。大きなおもりだが、城壁の近くで石や鉛の塊を使えば可能である。海の側の腕が長いほど鉤爪は遠くまで届くが、必要なおもりも大きくなる。