チャールズ・サンダース・パース(1839–1914)は、化学者であり、天文学者であり、測地学者であり、論理学者であり、哲学者でもありました。合衆国沿岸測量局で三十年にわたって地球の重力を測り、フレーゲとは独立に論理の量化子の記法をつくり、残った時間で 20 世紀にもっとも影響力をもった記号の理論を築きました。彼はペンシルヴェニアの家で貧しく亡くなり、数万ページの手稿を残しました。それは今も編集が続いています。 チャールズ・サンダース・パース(1839–1914)、アメリカの哲学者・論理学者。ナポレオン・サロニー · ニューヨーク公共図書館 · Wikimedia Commons · パブリックドメイン パースは論理学者であり、論理学者のように考えました。彼にとって記号論とは「広い意味での論理学」であり、その考えは数学にぴったりあてはまります。 二つではなく、三つ ソシュールは記号に二つの面、シニフィアンとシニフィエを見ました。パースは三つの要素を見ました。 記号(あるいは表意体):紙の上の $\pi$ という印のように、知覚されるもの。 対象:記号が指し示すもの。円周と直径の比。 解釈項:記号が読む人にもたらす効果、記号が呼びおこす理解。 解釈項は読む人そのものではありません。記号が引きおこす思考であり、その思考がまた新しい記号になって、別の思考を引きおこし、それがまた……と続いていきます。$2+3=5$ を見て、読む人はそれを等式だと認めるかもしれないし、計算の検算に使うかもしれないし、証明の中に組みこむかもしれません。記号は同じでも、解釈項は何をしているかによって変わるのです。パースはこの終わりのない過程を記号過程(セミオーシス)と呼びました。 パースにおける記号・対象・解釈項の関係。ボタンで例を切りかえられる。図は説明のための単純化である。 このインタラクティブな図形を表示するには、JavaScriptを有効にしてください。 イコン、インデックス、シンボル パースのもっとも有名な分類は、記号を対象との結びつき方によって分けるものです。 イコンは類似によって表す。肖像画、地図、図。三角形の図は三角形のイコンである。 インデックスは事実上のつながりによって表す。煙は火を、足あとはだれかが通ったことを示し、矢印はある場所を指す。図の中で頂点のそばに書かれた文字 $A$ はインデックスで、「これだ」と指している。 シンボルは約束ごとや習慣によって表す。言葉、数字、$+$。規則を学んだ人にとってだけ働く。 数学の記号は、一見するとほとんどすべてがパースの意味でのシンボルです。そして驚きはここにあります。 すべての方程式はイコンである パースは、この分類が記号一つずつではなく、式全体にあてはまることに気づきました。方程式の中の記号はシンボルですが、方程式全体はイコンなのです。その形が、量のあいだの関係の形を写しとっているからです。彼はこう書いています。 イコンを特徴づける大きな性質は、それを直接観察することによって、その対象について、イコンを構成するのに必要だった真理以外の真理を発見できることである。[……]すべての代数方程式はイコンである。それ自体はイコンではない代数記号によって、関わっている量の関係を示しているかぎりにおいて。 — チャールズ・S・パース『論文集』2.279 および 2.282(1893–1903 年ごろ) 最初の文は、この本が生きた記法と呼んでいるものの、これ以上ない定義です。書かれたものを見ることで、意図して入れたわけではないことを発見できるとき、その書き方は生きているのです。ライプニッツの連鎖律が完璧な例です。$dy$ が約分されるように $\frac{dz}{dy}\cdot\frac{dy}{dx}$ をかいた人はいません。けれども形はそこにあり、それを見る人は規則を発見するのです。 もう一つ、ずっと古い例を見てみましょう。一辺が $a+b$ の正方形をかき、各辺を $a$ と $b$ の二つに分けます。 $$(a+b)^2 \;=\; \underbrace{a^2}_{\text{大きい正方形}} + \underbrace{ab+ab}_{\text{二つの長方形}} + \underbrace{b^2}_{\text{小さい正方形}} \;=\; a^2+2ab+b^2.$$図はこの恒等式のイコンです。見れば長方形が二つあることがわかり、多くの生徒が忘れてしまう $2ab$ はそこから来ています。式もまた、別の仕方でイコンです。その形を見れば、何もかかなくても、$b$ を $-b$ に置きかえれば $(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$ になることがわかります。