四つの平方数で足りる
好きな正の整数を一つとって、平方数 $0, 1, 4, 9, 16, 25, \ldots$ の和として、できるだけ少ない項で書いてみましょう。
$$\begin{aligned} 5&=4+1,\\ 6&=4+1+1,\\ 7&=4+1+1+1,\\ 30&=25+4+1,\\ 2026&=2025+1=45^2+1^2. \end{aligned}$$それ自身が平方数のものもあれば、二つ必要なもの、三つ必要なものもあります。7 は四つ必要で、ほかに方法はありません。五つ必要な数はあるでしょうか。1770 年、ラグランジュはないことを証明しました。
すべての正の整数は、四つの整数の平方の和である。
ゼロも平方数に数えれば、これは $n=a^2+b^2+c^2+d^2$ となる $a, b, c, d$ がいつも存在するということです。
十五世紀にわたる予想 250 年ごろ、アレクサンドリアのギリシア人ディオファントスは、ある数が四つの平方数の和に書けることを、問題のなかで説明なしに使っています。1621 年、フランスのクロード=ガスパール・バシェはディオファントスの『算術』のラテン語版を出版し、この主張をはっきり書きました。彼は 325 まで確かめたが証明はわからない、と述べています。
ピエール・ド・フェルマーが有名な書きこみをしたのは、このバシェの本の余白でした。フェルマーは自分の無限降下法で証明したと宣言しましたが、いつものとおり、それを見せることはありませんでした。
オイラーの四十年 オイラーはおよそ四十年にわたって証明を試み、最後までたどりつけませんでした。けれども 1748 年に、いちばん大事な部品を見つけます。四つの平方数の和どうしの積は、また四つの平方数の和になることを示す恒等式です。
$$\begin{aligned} &(a^2+b^2+c^2+d^2)(e^2+f^2+g^2+h^2)\\ &\quad=(ae+bf+cg+dh)^2\\ &\qquad+(af-be+ch-dg)^2\\ &\qquad+(ag-bh-ce+df)^2\\ &\qquad+(ah+bg-cf-de)^2. \end{aligned}$$魔法のように見えますが、両辺を展開するだけです。交差する積はすべて二つずつ打ち消し合います。たとえば $7=2^2+1^2+1^2+1^2$、$15=3^2+2^2+1^2+1^2$ です。恒等式から
$$\begin{aligned}105&=7\cdot15=10^2+1^2+0^2+(-2)^2\\&=100+1+0+4.\end{aligned}$$この結果は強力です。どんな数も素数の積です。それぞれの素数が四平方和なら、恒等式によってその積も四平方和になります。したがって、定理は素数について証明すれば十分なのです。
ラグランジュの証明 ここで、1770 年、すでにベルリンにいたラグランジュが登場します。彼の証明は二段階からなり、どちらもフェルマーの降下法の仲間です。
第一段階。 どんな奇素数 $p$ についても、$x^2+y^2+1$ が $p$ の倍数になる $x$ と $y$ が存在します。理由は数え上げです。$x$ を $0$ から $\frac{p-1}2$ まで動かすと、数 $x^2$ は $p$ でわったとき $\frac{p+1}2$ 個の異なる余りを残し、数 $-1-y^2$ も同じです。$\frac{p+1}2+\frac{p+1}2=p+1$ は可能な余り $p$ 個より多いので、鳩の巣原理により、二つのリストのあいだで余りがどこかで重なります。したがって $p$ のある倍数、たとえば $mp$ は四平方和 $x^2+y^2+1^2+0^2$ になります。