根を入れ替える:方程式の群
両足をそろえて計算を飛び越えること。演算をまとめ、その形ではなく難しさによって分類すること。それが、私の考えでは、未来の幾何学者の使命である。
— エヴァリスト・ガロア、ある原稿の序文(1831) ガロアの六十年前、ラグランジュは方程式の根でできた式を調べ、根の場所を入れ替えたときにそれらがいくつの値をとるかを数えました。ガロアはさらに一歩進みました。式を見る代わりに、入れ替えそのものを見たのです。それもすべての入れ替えではなく、方程式が許すものだけを。
許される入れ替え 有理数を係数とする方程式をとり、その根を $a, b, c,\dots$ とします。根の間には、ある関係が成り立っています。$a+b=0$ や $a^2=2$ のような、有理数を係数とする正しい等式です。ガロアは方程式の群を、成り立つすべての関係を別の成り立つ関係に移すような、根の置換の集まりとして定義しました。
最も簡単な例は $x^2-2=0$ で、根は $a=\sqrt2$ と $b=-\sqrt2$ です。たとえば次の関係が成り立ちます。
$$a+b=0,\qquad ab=-2,\qquad a^2=2,\qquad b^2=2.$$$a$ と $b$ を入れ替えても、四つとも成り立ったままです。群の元は二つです。何も入れ替えないことと、二つの根を入れ替えることです。
$x^2-3x+2=0$ と比べてみましょう。根は $a=1$ と $b=2$ です。ここでは関係 $a=1$ が成り立ちます。根を入れ替えると $b=1$ となり、これは誤りです。だからこの入れ替えは許されず、群には恒等置換しかありません。これは偶然ではありません。
根の有理式が有理数であるのは、群のどの置換によっても変わらないとき、そしてそのときに限る。
これが理論の中心となる原理です。とくに、根がすべて有理数であるのは、群が恒等置換だけのとき、そしてそのときに限ります。群が大きいほど、根は深く「隠れて」いるのです。
四つの根、四つの入れ替え 方程式 $x^4-5x^2+6=0$ は $(x^2-2)(x^2-3)=0$ と因数分解できます。根は
$$a=\sqrt2,\qquad b=-\sqrt2,\qquad c=\sqrt3,\qquad d=-\sqrt3.$$四つの根の並べ方は $4!=24$ 通りありますが、その大部分は何らかの関係をこわしてしまいます。たとえば $a$ と $c$ を入れ替えると、成り立つ関係 $a^2=2$ が $c^2=2$ になり、誤りになります。残るのは、$\sqrt2$ を $\pm\sqrt2$ に、$\sqrt3$ を $\pm\sqrt3$ に移す入れ替えだけです。
置換 $a$ の行き先 $c$ の行き先 恒等置換 $a$ $c$ $a\leftrightarrow b$ を入れ替え $b$ $c$ $c\leftrightarrow d$ を入れ替え $a$ $d$ 両方を入れ替え $b$ $d$ 群の元は、ありうる 24 個のうち四つです。4 次に見えたこの方程式は、実は独立な二つの平方根で解けるのであり、群がそれを示しています。